まだできる
次の日僕は、開き直り自分のやり方で好きなようにやろうと思いました。先生の指導も聞かず、自信を持って描いていきました。すると、もう何をしたらいいのか分からないくらい描ききったはずの自分の作品が、全くモチーフに似ていないのに気付きました。平面的な位置関係や顔の印象ではなく、もっと大切なものが似ていないのに気付きました。それまでの僕は、自分の出したものにすぐ満足してしまい、「完璧だ!!」とか思っていたので、こんな事は初めてで、どうしていいか分かりませんでした。ただただ、普通に描いたりつくったりしていたモチーフが、こんなにすごいものだったのかと驚いていました。その時から考え方が一気に変わり、こんな凄いものが描き方やつくり方、小手先の仕事だけで似せられる訳がないと心から思いました。今まで先生方が毎日のように言っていた「観ろ」「感じろ」「必死でやれ」ということ、ただの精神論にしか聞こえなかったことが、やっとわかったような気がしました。それからの芸大までの何日間かは、すごく貴重なものでした。今何故やるのか分からなかった「壊す」という行為も、少しづつ出来るようになってきました。本当の意味でも似せるということの難しさを知り、コンクールで上位になっても満足することが出来なくなって、常に「まだまだできる」と思いました。 |